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新型コロナウイルス禍にどう向き合うかを考えてみました。
新型コロナウイルス(COVID−19)の感染拡大はいつ収束するのか、4月23日の現在では、全く見通しのもてない状況下で、世界中の人が暮らしています。そして医療の最前線では、いまだ治療の決定打がない中で、医療従事者の献身的な働きに支えられながらも、医療崩壊の危機が叫ばれています。 一方、高齢者、障害者、子ども、基礎疾患のある人、そして元気な人、あらゆる人が「感染する、させる」リスクをもっています。その中で、「感染しない、させない」ための対策が講じられ、そのために誰もが知恵を絞っています。厚生労働省は、「密閉」「密集」「密接」の3密を避けるように呼びかけていますが、緊急事態宣言が全国に出されてからも、3密が避けられない職場や現場はたくさんあります。子どもにかかわる現場では、保育園、幼稚園、学校、学童保育、放課後等デイサービス、児童発達支援センター、児童発達支援事業所、障害児入所施設、児童養護施設、児童自立支援施設など、たくさんの現場が、子どもと職員で成り立ち、それぞれの役割を果たしています。その中で、入所系の現場の困難については、細心の注意を払い、外からの感染を持ち込まない努力をされていると思います。ここでは通所系の現場での苦悩と困難と矛盾について考えたいと思います。 まず、いち早く休校を決めた学校については、たくさんの課題を積み残しにしたまま、子ども自身や家庭、放課後デイにその負担を押し付けて休校が成り立っています。児童館、学童保育も学校と連動して、出勤の必要な家庭のみの最少の人数での子どもと職員の空間となっています。 問題は、児童発達支援や放課後等デイサービスの事業所で、もともと抱えていた矛盾がより拡大しています。その中で、様々な不安が錯綜し、開所するも、閉所するも、いずれにしても事業の意味合いがや役割が問われているのではないかをと考え、その意味を問い直そうと考えました。 児童発達支援も放課後デイも、障害や発達の弱さなど、療育や特別な支援が必要な子どもたちが利用している事業所です。2001年から始まった支援費制度、障害者自立支援法、障害者総合支援法、現在の改正児童福祉法と、根拠法はかわれども、契約制度、利用者負担、日額出来高報酬制はかわっていません。さらに、実施主体は社会福祉法人に限らず、株式会社、有限会社、NPO法人なども可能になりました。結果、児童発達支援事業所は7000か所、放課後等デイサービスは14000か所を超える勢いで、今もなお増えています。 契約制度になり、保護者は何か所もの事業所と契約することができ、支給量ぎりぎりまでサービスを利用することもできます。利用料も上限が設けられています。保護者の就労状況や子ども理解によっての利用に差が出てきます。 保護者のニーズと子どもの状況を踏まえた利用調整を行う相談支援事業もありますが、契約は保護者、利用は子どもである矛盾や保護者支援と子どもの発達支援の両方の専門性を兼ね備えた、障害児相談支援が十分機能しているとは言えない状況です。 この20年間で大きく様変わりした児童発達支援分野ですが、特徴的なことは、業界と呼ばれる経営中心の事業所、療育と称した塾まがいの内容で集客する事業所の増加があげられます。「発達障害が治ります」的な甘い誘いに保護者が巻き込まれ、右往左往している姿がみられます。また、増えた社会資源をうまく利用して、保護者と子どもの暮らしの安定が実現している家庭もあります。また、保育園や幼稚園と療育を組み合わせて、互いの役割を活かし、子どもの発達支援につないでいる保護者もたくさんいます。いずれも、以前より障害の発見年齢が下がり、発達障害などの情報はあふれ、保護者の子育て不安が高まりやすくなっていることが背景にあるのではないかと思われます。だからこそ、乳幼児健診の充実や保育園や幼稚園での丁寧な対応や巡回相談の充実など、地域と専門機関とがつながりあって、親子を支える仕組みが大切です。 今、子育てに不安な保護者が「誰と、いつ、どんな形で出会うのか」がとても重要になっています。丁寧な早期発見、対応から、早期療育につながる道筋が自治体の公的なシステムの構築抜きには実現しないと考えます。全国的にはそれを実現している自治体もありますが、多くは、自治体から渡される事業所のリストから、ホームページなどの情報を頼りに、保護者が自分で契約先を探し、子どもを通わせているのが現実です。そのようなアンバランスで不安定な状況の中で、新型コロナウイルス禍が、子どもたちが通う児童発達支援や放課後等デイサービスの事業所を直撃しています。
NPO法人福祉広場では、緊急事態宣言を受けて、感染防止のためにどうすればよいかを職員間で議論しました。訪問系の事業所は利用者の命や暮らしと直結している業務内容なので、訪問先のニーズを最優先します。通所系の4つの事業所は、京都市内の各所から通ってきていて、かつ毎日違う子どもたち12,3人と保護者が集まる状況で、もしも感染があれば全市的な拡大につながる可能性が大きいことを懸念し、休所を決定しました。4月18日の金曜日、全国に緊急事態宣言が出された日に休所の連絡を通所の利用者に約200名に行いました。そして翌週の月曜日から、各家庭に様子をうかがう電話をかけ、子どもや家族の健康や様子、困りごとや嬉しいことなどを聞き取っています。保護者には事前に連絡することを伝えて了解をいただいていたので、どなたも気持ちよくお話しいただけました。対面が苦手なママの場合、かえって電話でのほうが話が弾みむという怪我の功名もありました。収まらないきょうだいげんかやゲームやビデオ漬けなど、たくさんの悩みはありましたが、どうしようもない悩みだとわかっていても、それを吐き出して聞いてくれる人の存在の大切さを電話対応で感じました。一週間目の様子は、割と穏やかに過ごしている印象でした。しかし、親子で煮詰まっている家庭ももちろんあります。子どもが多動でエネルギーが発散できない、パパが家庭にいて余計ややこしい、などの困りごとには、具体的な遊びやかかわり方のヒントなども盛り込みました。 放課後デイでは、電話だけでなくスカイプやライン電話も使っています。声だけではなく、自分で作った工作を見せてくれたり、映像を通してのコミュニケーションはたのしく取り組めているようでした。 現在1週間目が終わろうとしています。そして、休所のお知らせをしたときは一応連休明けの5月6日までとしていました。休日も含まれている約3週間の間、子どもたちはどのように過ごしているのか、ママやパパ、とりわけお母さんのイライラはどうなっているのだろうか?気になることが次々と出てきます。福祉広場の4つの事業所は毎日通うところではありませんが、保育園や幼稚園のお休みが続くとき、むしろ、週1回の療育への期待が高まります。「ひろばは最後の砦」と表現したお母さんもいました。その中で、次の展開をどうするのかに悩みます。 新型コロナウイルスの感染が広がり、来所を控える保護者が増え始めました。3月からじわじわ増えてきましたが、通常通り療育を行っていると、8割ぐらいの親子が通ってきてくれていました。実際に休所を連絡すると、「ホッとした」という保護者もたくさんおられました。4月24日の現段階では、通常通りの開所はまだ難しいと判断しています。しかし、緊急事態宣言が解けるまで休所を続けることは適切ではないとも考えます。こちらが判断して、緊急性やニーズがあると思われる場合に声をかけて、来所を促しひろばのプレイルームを開放して遊ぶ時間を作る、あるいは、個別及び少人数での来所希望を予約の形で受け付け、療育を実施する方法です。 感染しない・させないを、子どもに合った形で実践していくことがいま求められています。しかし、学校が保護者の就労に対して特例での預かりを行い、就労保障のための保育は細心の注意を払って実施されているように、子どもたちの基礎集団においての保育、療育、教育は、実施されるべきではないかと考えます。そしてその時の要件に、保護者の就労だけではなく、障害があることも要件に加えるべきではないかと考えます。就学している子どもで放課後デイを利用している場合も、学校に行った後の放課後の時間帯での利用にするルールを作り、学童保育と同じような扱いで事業所を利用することができるのではないでしょうか。一つのところに負担がかからないようにすることも持続可能な支援のしくみではないかと考えます。 そもそも障害のある子どもは障害の重さや種別に関係なく、特別な配慮やかかわりの専門性が必要です。それは非常時においては一層必要となり、手厚さが求められます。今回の新コロナウイルス禍のように想定外のことが起こったときにこそ、「障害のことなんか言えない」ではなく、障害に特化しての対応が求められることを改めて思いました。 今、感染しない・させない対策を障害のある子どもに焦点を当てて考えた時に、子どもが通う基礎集団での対応を充実させることが第一に必要です。保育園でも学校でも、障害のある子どもはいつまでも家に閉じ込めておくことはできません。しかし、学校や保育園、幼稚園、療育施設も限界があります。そこでの役割は放課後デイや児童発達支援事業所でのピンポイントでの支援が有機的に連携して支えることで重層的な支援につながるのではないかと考えます。放課後デイだけに負担がかかる仕組みに反対です。子どもに係る機関、事業所でつながりあって考えてみませんか? 池添 素
日時 2020年04月25日 06:37 |
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