編集長の毒吐録
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☆2020/6/12更新☆

【読書雑記644】『結愛へ 目黒区虐待死事件 母の獄中手記』(船戸優里、小学館、1400円+税)。<もうおねがいゆるしてください>・・。あまりにも悲痛な叫び声を書きつけて、結愛ちゃんの人生はわずか5年で幕を閉じた。夫のDVに追い詰められ、心をすり減り、母は結愛ちゃんの人生を奪った。児童相談所にも警察にも、「助けて!」のSOSは届かなかった。

「しつけという名」の虐待は日常的にくりかえされた。結愛ちゃんを衰弱死に追い込んだ罪に問われて、母(著者)は8年の実刑判決を下された。本書はその母の痛みと悲しみの心模様の記録である。ルポライター・杉山春さんの解説、精神科医・白川美也子さんの診断書もついている。

僕は、本書の編集者に聞いてみたい。母の「無念心」は分かる。しかしそれが僕には「夫が怖かったので」という言い訳に使われているように感じるのだ。娘への声掛けよりも、夫の暴力を含む虐待への糾弾の声が聞こえないのだ。

残念ながら、僕が期待していた事柄がこの本には書かれていない。なぜ、友愛ちゃんは死んでしまったのか、なぜ彼女は死ななければならなかったのか、なぜ母はそれを防げなかったのか・・。なぜあの時こうしなかったのかという強い後悔や懺悔も聞こえてこない。唐突に始まる私は死んだ方がいい、生きて償う、生きる資格もないという一文があるが、それを待ちたい。

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