編集長の毒吐録
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☆2020/6/19更新☆

【読書雑記646】『社会とことば〈井上ひさし 発掘エッセイ・セレクション〉』 (井上ひさし、岩波書店、2000円+税)。井上ひさしは、創作しつつ社会的な発言も旺盛にこなした。さらに言えば、社会的発言をした創作品を多くものにした。旺盛な「社会的発言」と「創作」とを切り離して捉えてはいなかった。本書には、吉里吉里国、憲法、コメ、原発などに関するエッセイを収録してある。時を経ても色あせることのないメッセージが満載だ。

1日40本はたばこを吸うという愛煙家で、「喫煙と肺癌は無関係」という見解をたびたび披露していたが、井上は09年秋に肺がんと診断され、「やはり肺がんとたばこには因果関係があるんだね。さすがに禁煙したよ」と述べていたという。治療中の10年4月9日に死去した。

稀代(きだい)の劇作家が去って10年。短編集『十二人の手紙』(中公文庫)も読者を集めている。単行本に収録されていない短文を集めた本書など3冊が新たに編まれ、仕事を見渡した何人かの論者による連続座談『「井上ひさし」を読む』もまとまっている。これらに共通する話題は、代表長編『吉里吉里人』。50年、15歳で早くも原型「わが町の独立」を大学ノートに記していたという作者は、一部をラジオ劇として64年に実現(『社会とことば』にその検討稿を掲載)、73年から雑誌連載が始まり81年に完成しているが、難産した経過がよくわかった。

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