編集長の毒吐録
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☆2020/7/3更新☆

【読書雑記650】『にほん語観察ノート』 (井上ひさし、中公文庫、590円+税) 。日本語に、鋭い問題意識をもって向き合った著者のエッセイ風評論。各章毎に例が挙げてあり、話題はこの著者らしく飛び、それにつれて、言葉や表現方法について考えることが出来る。気楽に読めるけれども、内容は深くて濃い。

日常生活で使われる日本語が、例に挙げられる。それはレストランのウエイターの敬語だったり、総理大臣の演説だったりする。政治家や役人が好んで使う用語、日本語の発音の変化、赤ちゃんの名前・・。それらに対する著者の研ぎ澄まされた感覚は、日本語が壊れていくのを食い止める途を考え、著者ならではの対応策を示す。

と言っても、本書は決して肩の凝るような固い本ではない。愚考するに、それは新聞のコラムとして連載されていたからだろう。新聞に出来事を選んで、短いエッセイ風にまとめた。その意味ではタイムリーに読めばよく出来た本だが、なにせ取り上げられる事例が2000年頃のもので、本書は10年に再販されていて、事例が陳腐化しているが、それはどうしようもない。

日本語には音素が百十数個しかないので、四百もある中国語や何千もある英語より駄洒落が作りやすいとか、日本語はカウントアップするときとカウントダウンするときで、使用する音が違うなど、言われるまで気がつかなかった。そんな事例が次々と扱われる。

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