編集長の毒吐録
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☆2020/7/14更新☆

【読書雑記653】『「日本国憲法」を読み直す』 (井上ひさし・樋口陽一、岩波現代文庫、1040円+税)。「日本国憲法は占領下にアメリカに押し付けられたものだ。時代にそぐわないがゆえに改正すべきだ」「国際平和のために九条を改正して戦争ができるようにすべきだ」。こんな改憲論が高まる今、憲法を読み直すことは、国家と個人の関係を問い直すまたとない機会でもある。同年生まれの2人で、かつ敗戦の体験を共有する作家と憲法学者が語り合った記録(ちなみに、井上ひさしと樋口陽一は、仙台一高の同窓生)。好著。

井上ひさしが書いた「プロローグ」は、<憲法の前に剣法の話をちょっと」となっている。江戸時代という260年も続いた泰平の時代、「剣を抜かない」のが、最高の剣法と言われていたとのこと。ひさしらしい駄じゃれ?(しゃれ)。江戸時代を出発点として、戦後、戦争を禁止する条項が憲法に入るようになる。幣原首相が提案したという事実がある。それを米占領軍が憲法成立後1年くらいで「憲法を変える」という方針をもったにも拘らず、日本国民の抵抗で明文改憲を許していない事実を考えたく思う。それは、日本人の平和を望むエネルギーの強さを現わしているのではないか。

この本は、1994年に講談社から出版された。当時は、護憲の立場に立ったものは、ほとんど出版されていなかった。「護憲」の立場に立つ記念碑的なこの本が、憲法施行50周年に文庫本という形で岩波書店から再出版されたことを喜ばしい。憲法施行75年を間もなく迎える年、本書でひさしと樋口陽一が対談で語っていることは、今日的な課題でもある。

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