編集長の毒吐録
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☆2020/7/24更新☆

【読書雑記656】『茨木のり子の家 』(茨木のり子/著、小畑雄嗣/写真、平凡社、1800円+税)。好きな詩人、「詩」ではないが、ユン・ドンジュを紹介した文章で僕は彼を知った。詩人自身が設計し、没後も生前のまま残る茨木邸のインテリアや庭、蔵書、食器、自筆原稿、日記などを写真家が撮影、貴重なスナップ写真や初公開資料も掲載してある。

詩人が送った暮しがページから写真で伝わる。モダンであり、また日本的でも文化的でもある空間。写真を観て、詩を読むことが出来る上質な本だった。

茨木の詩に「歳月」があるが、その「歳月」を彷彿とさせる本。初めて観る彼女自筆の原稿、お連れ合いが撮ったという茨木の写真、リビングにまで写真家の眼は及ぶ。

恐らく、茨木の詩「倚りかからず」(もはや/できあいの思想には倚りかかりたくない/もはや/できあいの宗教には倚りかかりたくない/もはや/できあいの学問には倚りかかりたくない/もはや/いかなる権威にも倚りかかりたくはない/ながく生きて/心底学んだのはそれぐらい/じぶんの耳目/じぶんの二本足のみで立っていて/なに不都合のことやある//倚りかかるとすれば/それは/椅子の背もたれだけ)の対象になったかもしれない椅子、「歳月」と合わせて読むと、彼女がそこに居るような思いに捉われた。

茨木の詩「自分の感受性くらい」から感じる凛とした彼女の生きる姿勢は見ているだけで心地よい。玄関のドア、電灯のシェード、チェア、テーブルクロス、グラスやコーヒーカップなどよく吟味された、丁寧な暮らしぶりが如何にも彼女らしい。

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