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☆2020/8/11更新☆
【読書雑記661】『日本の朝鮮侵略史研究の先駆者 歴史家山辺健太郎と現代』 (中塚明、高文研、2200円+税)。安倍晋三首相の談話(2015年8月)に、「日露戦争は、植民地支配のもとにあった、アジアやアフリカの人々を勇気づけました」という部分がある。日露戦争での日本の朝鮮侵略、その5年後の韓国併合について触れていない。歴史修正主義的言説の典型だ。日清・日露戦争で朝鮮の植民地化を進めて、日本は近代国家として自立していった、つまり朝鮮を踏み台にして「一等国」になったという歴史的事実が、日本人の「常識」にならない限り、いわゆる「嫌韓」は残るだろう。
本書で、著者は、歴史家・山辺健太郎の生涯と思想をたどりながら、明治以後の日本の朝鮮侵略の事実を自覚することの大切さを述べる。
僕は、山辺の筆になる岩波新書の『社会主義運動半生記』『日韓併合小史』、『日本統治下の朝鮮』は、とりわけ後二者の本によって朝鮮認識を深めることが出来た。まだまだ近現代の朝鮮史に関しての本が乏しい時期、この本はきわめて学問的に、そして人間的に近現代朝鮮史をまとめたものだった。中塚明が、山辺の人物像や学問的成果について紹介した本書から多くのことを学び、山辺像を豊かにすることが出来た。山辺は大学を出ていない。いわゆる独学だ。独学ではあっても、その知的水準は、とても高くて深い。「学問に学歴はいらないが、努力はいる」という山辺の言葉は重い。
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