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◆ひゅうまん京都

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編集長の毒吐録

☆2019/7/21更新☆

【読書雑記554】『望郷と海』(石原吉郎、解説/岡真理、みすず書房、3000円+税)。シベリアでの収容所体験の日々を著者は痛苦の思いで振り返り語り、あわせて、戦後日本社会に見たことも語る。解説で岡真理は言う。「彼はついに〈告発〉の言葉を語らなかった。彼の一切の思考と行動の根源には、苛烈で圧倒的な沈黙があった。それは声となることによって、そののっぴきならない真実が一挙にうしなわれ、告発となって顕在化することによって、告発の主体そのものが崩壊してしまうような、根源的な沈黙である。強制収容所とは、そのような沈黙を圧倒的に人間に強いる場所である。そして彼は、一切の告発を峻拒したままの姿勢で立ちつづけることによって、さいごに一つ残された〈空席〉を告発したのだと私は考える。告発が告発であることの不毛性から究極的に脱出するのは、ただこの〈空席〉の告発にかかっている」

本書のすごさは体験そのものの過酷もさることながら、「死にざま」から「生きざま」への転換だろう。収容者の寂寥、思い出したくもない記憶を取り戻す過程などを、研ぎ澄まされた言葉で紡ぐ。

<私は人間になりたいと思っている。では私は人間ではないのか。では私は今何なのか。しかし私は、私の周囲に起き伏しし、悩んでいる多くの人たちと一緒に、やはり人間ではないか。では、私がなりたいと思っている物は一体何なのだろう。私は私が人間であるということを、はっきり知りたいと思っているのではないだろうか>。

アイヒマンは「百人の死は悲劇だが、百万人の死は統計だ」という言葉を残したが、著者は<ジェノサイドの恐ろしさは、一時に大量の人間が殺戮されることにあるのではない。その中に、一人一人の死がないということが、私には恐ろしい・・死においてただ数である時、それは絶望そのものである>という。

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