編集長の毒吐録
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☆2020/8/19更新☆

【読書雑記663】『事大主義 日本・朝鮮・沖縄の「自虐と侮蔑」』 (室井康成、中公新書、820円+税)。「強者に追随して保身を図る態度」を表現する言葉として「事大主義」は使われて来た。それは、国民性や民族性を示す言葉として、日本や朝鮮で使われてきた。著者は、福沢諭吉、陸奥宗光、柳田国男、朴正煕、金日成、司馬遼太郎らの「事大主義」を論じ、時代の映り代わりを描く。自虐と侮蔑が交錯した東アジアの歴史を明らかにする。

明治期の造語である「事大主義」は、広辞苑では「自主性を欠き、勢力の強大な者につき従って自分の存立を維持するやりかた」となっている。ネガティブなイメージの言葉であることは共通している。本書ではこの言葉の使われ方を追うことで、近現代史を別の側面から洗い直すことを目的としている。

事大主義は、孟子に由来し、「小国」が「大国」に事(つか)える事を意味すると著者は言う。現代日本で使う「忖度」、あるいは「長いものに巻かれろ」と同義と言えよう。司馬遼太郎は「東亜グローバリズム」だった。柳田国男も同様で、日本人とは「島国根性と事大主義」の持ち主であり、谷川健一は、「島国=事大主義」と見立て超克する方法として、「事小主義」(徹底して弱者に寄り添う)を説いているという。敗戦後の「一億総懺悔」は、「事大」の典型的な出来事だった。

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