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☆2020/6/2更新☆
【読書雑記641】『横田空域 日米合同委員会でつくられた空の壁』 (吉田敏浩、 角川新書、840円+税)。羽田空港や成田空港を使用する民間の飛行機は、急上昇や迂回を強いられる。そこには米軍だけが使える巨大な空域があり、それを避けるためだ。主権国家の空を外国に制限されるのはなぜなのか?密室での合意が憲法を侵し、法律を超越している!密室で決められた法体系をさらけ出す好著。
「東京、神奈川、埼玉、群馬のほぼ全域、栃木、新潟、長野、山梨、静岡の一部、合わせて一都九県に及ぶ広大な空域である・・最高高度約七000メートルから、(中略)、日本列島中央部の空をさえぎる、ヒマラヤ山脈なみの目に見えない巨大な「空の壁・塊」となっている・・そこは日本の領空なのに、米軍が優先的に使用できる空域である。空域の航空管制を、横田基地の米軍が握っているからだ」(本書)。
著者は、「空の植民地」に切り込む。まずは、米軍にとっての存在意義。第2は、アジアにおける米軍の航空輸送・航空戦力との関係。もう一つは、山岳地帯の超低空飛行訓練を米本土に戻らないで実施できること。オスプレイやヘリコプターによる特殊任務と空母艦載機を含む戦闘機の対地攻撃訓練を含むそうだ。敵のレーダー網を避けて侵入する訓練が日本政府や地元に断りなしで済むからだ。
著者は、横田空域の法的根拠の闇を詳述する。日米地位協定と合同委員会に根拠があると思われるのだが、明文の日米合意は見つけられない。日本の所管官庁に情報公開を求めても、黒塗りの資料しか出てこない。同じ敗戦国である、ドイツやイタリアにおいては、米軍航空機はその国の航空管制下にあるのに、なぜ日本は・・。
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