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☆2020/7/21更新☆
【読書雑記655】『いま、解読する戦後ジャーナリズム秘史』 (柴山哲也、ミネルバ書房、3000円+税) 。今だから理解できる、あるいは、今だからオープンに出来る「事件」がある。ジャーナリズム史は戦後の社会史に直結する。本書は、ジャーナリストとして事件に関わった著者が書いたジャーナリズム史である。事件の経緯、内実を明らかし、それが現代の社会にいかにつながるのかを記述する。
本書から、日本のメディアは自己反省が足りないとの感を受けた。もし有事の状態になったら、メディアはどう報じるのか、「メディア自身の『有事』が捉えられていない」と著者は指摘する。政府はNHK などの動員を考えているようだと著者は言い、これはかつての「大本営発表」ではないかと案じる。
著者は50代半ばで新聞記者を辞め、その後は大学などでジャーナリズム研究と教員としての生活を送っている。自らの体験を学問的に理解することを後半生の仕事にした。それだけに具体的で論の運びがわかりやすい。加えて、豊富な海外取材のエピソードも盛り込んでいるので、意表をついた読み物にもなっている。
1981年、北朝鮮に「取材」で行ったとき、ピョンヤン近郊の外国人用とおぼしきレストランで食事をとる。その奥の売店に、日本のたばこがあったので求めたという。売り子の少女が日本語を聞いて笑った。写真を撮ろうとカメラを取りに行くと、少女は二度と姿を現さなかった。まだ横田めぐみさんの拉致が日本国内でも知られていないときで、著者はのちに彼女ではないかと推察する。写真がそっくりだったのである。
また、アメリカの国立公文書館で、探していた重要な外交機密文書を見つけたが、館員は日本の外務省の了解がないと見せられないという。外務省はこれほどまで取材の妨害をしているのかと、著者は驚く。
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