広場の視点
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第20回 支援費制度の介護保険への統合問題
◆障害者の福祉サービスが、大きく変ったのは03年4月のことだった。ホームヘルプ、ショートステイなど、行政がサービス内容を決め、提供していた「措置制度」が大幅に縮小され、かわって、「支援費制度」が新設されたからだ。同制度は、障害者自身が、利用するサービスを選び、申請する。そしてサービス利用料の一部を行政が負担することになっている。

ところが、新制度発足1年にもならない最近、厚生労働省は、05年度の介護保険制度見直し時期にあわせて、支援費制度を介護保険に統合するとの動きを強めている。

◆理由として明らかにされているのは、支援費制度を支える財源が不足している、今後はもっと深刻になるというものだ。

同時に、介護保険の側の事情も取りざたされている。統合によって、介護保険料負担者(被保険者)を、現行の40歳以上から20歳以上に引き下げ、若年障害者も介護保険の対象にするというものだ。年齢引き下げ理由に、統合が使われている。

◆制度開始から1年しか経っていない時点で、財源だけを理由として、制度を否定することには無理がある。財源が不足したということは、制度が歓迎されているということであって、制度を充実させるために財源を確保する方向で努力するのが筋というべきだろう。

また、障害者福祉施策の財源不足をいわば介護保険によって救ってもらおうという理屈は、介護保険の被保険者の理解は得られまい。さらに言えば、統合を契機に新たな負担を求められることになる40歳以下層からの、障害者福祉への反発さえ予想される。

◆それにしても驚いたのは、この問題についての日本経団連の反応だ。04年4月20日に明らかにされた意見書では、被保険者の年齢引き下げは「極めて慎重であるべき」としている。労使折半の保険料だから「個々の改革のたびに企業負担が増えるのは納得できない」と主張している。

また全国市長会は、統合問題と保険料徴収年齢の引き下げに「慎重な検討」を求めるとして、事実上反対する意見を明らかにしている(4月14日)

  財源だけを理由とする「統合・被保険者年齢引き下げ」は、いずれの側からも支持されない愚策というべきだろう。

 筆者紹介
井上吉郎
<WEBマガジン・福祉広場>編集長
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